直角プリズム   佐藤文香

青鬼は夜空に葱をかざしをる
掘るやうに街を進むや寒い雨 雪虫に紫水晶を見せてやりぬ ステーキの鉄板熱し誓ひのごと 炒飯のレプリカ冴ゆる三丁目 椿の蕾むしりとり剥きて捨つ ふらここの鉄鎖を磨く虚空かな 水それも雪解けの陸なり厚し 化石もと海や虫出づあたたまる まだら模様の球体はづむ焼野原 紙は赤 文字の書かるるなき場所も やまざくらながれなみたつ夜半にあり みづうみの広さに春の眠りかな 雛まつり白にて隠す語のもつれ 音楽や緑雨廃墟を好むかに
2010/3 「井泉」no.32